元々週刊誌に連載していた小説のようだが、とてもそうだとは感じられないほど、これほど長大な物語でありながら最初から結末まですべてデザインしてから書き出したとしか思えない。
この著者の作品は設定、プロット、ディテール、何をとってもいかにも映像化したくなるようなものばかりだが、しかし、「亡国のイージス」や「ローレライ」を観ても分かるように、とても2時間やそこらの尺に収まるようなスケールのお話ではない。
政治情勢の描写などもかなりのウェイトを占め、舞台そのものはどちらかというと男性読者向けに作られており、それを含め若干難解であったり非現実感を伴う展開もあるにはあるが、それにも拘らず極めて優れた筆運びと巧みな書き込み、リアルなキャラクターづけの力により、グイグイと読者を引っ張っていく。
一体どこまでリサーチしているんだろう? と驚愕するほどのディテールもものすごい。
ただ、最後の臨海副都心での戦闘シーンの細かい描写はちょっとくどくて読み進むのが辛い部分もあったけど…。
いずれにせよ、福井晴敏作品が好きな向きであれば充足できることが確実な、大作。 |