恐縮ながら、シリーズもここまでくると京極堂の衒学的な演説も少々読み苦しくなってきたのは事実だし、また、他作に比べて割と早い段階から真相の予断が可能な作品ではあるが、それ以上に、これまでのシリーズの中でもっとも“感情を動かされた”ことが印象的だった一作。
読み進めていくうちに、「ああ、そういうことなのかな」と段々と想像がついてきて、そして終幕は果たしてそのように展開していくんだけど、その最後の情景の途中で、なんだかとても物哀しく切ない気分になった。
これまでの京極堂シリーズにも、悲哀、といった類のテーマは込められていたこともあったとは思うが、正直私はそれを剥き出しの心根で感じたことは、今までなかった。 しかし今作に至って、作中人物のあまりの哀しさをリアルに読み取ってしまった、というのは、私の内面に変化が起こったからなのだろうか? |