海洋空間佳本


溺れる月 溺れる月」★★★★☆
新野剛志
小学館

2016.8.2 記
夜の公園で賭けレースに興じている市民ランナーに届けられた脅迫状。
そしてその脅迫通りに現れた1人の死体…。
この殺人事件を軸としたミステリーがこの後展開していくのかと思いきや、意外やすんなりとその犯人は明らかになり、物語はさらに大きく広がってゆく。
ランニング、そして賭けレースにのめり込むあまり、自覚をまったくせぬまま狂気の淵に堕ちていく主人公・高木の姿に、共感するところはないものの、同じくランニングを習慣的な趣味として楽しむ1人としてうすら寒さを覚えた。
今の時代ならではのインターネット社会の現状も、無理なく筋に絡めている。
エンディングがあまりに飛躍し過ぎて現実感が乏しくなっているところや、高木の動機付けに説得力が不足している点が少し残念だった。





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