本書のタイトルになっている命題について考えた時、人間の両目が左右に並んで付いているからかな? と私も著者と同じことをまず直感的に思ったが、もちろんそんな単純な話で終わるわけはなく、しっかりと納得がいくように理屈で説明してくれる。
ただ個人的には、紹介されているネッド・ブロックの主張から演繹できる理屈によって充分腑に落ち、そのあとに続くデカルト座標を用いた解説等よりも、大多数の人にとってはイメージすることが容易なのではないかな…と感じた。
回転軸云々についても、後半に展開される説明は実に難解。
"パリティ対称性の破れ"については初めて知り、勉強になった。
タイムトラヴェルに関して論じる第二章では、特にまとめにかかるあたりから、種々の理論を広範に紹介するという形を取りつつも、詰まるところ著者が明確に主張したいところへと多少の強引さを以て引っ張っていく、力業のような印象を持った。
自然科学の観点に立って論ずるのではなく、あくまで哲学者である著者が語る論理であるから当然と言えるのかもしれないが、いわゆる思考実験に終始しており、恣意的な解釈で煙に巻かれたような? とはあまりにネガティヴな評価に過ぎるか…?
いずれにせよ、哲学と数学や物理学は不可分だということを、通読して改めて感じた次第。
論理学にまつわる議論でさえ、物理法則と密接に絡み合っているではないか。
また、旧版は編集者の意向により第一章と第二章が逆だったそうだが、新版を出すにあたり著者本来の企図に従う順に戻したとのこと、こちらが明らかに正解だろう。
第一章に敬意を表し、星4つ。
旧版あとがきを読み、形而上学というものも一度きちんと学んでみたい、と思った。
「私たちの『背骨』ことが空間認識における回転軸となっていると考えられるでしょう。〜中略〜
私たちは決して鏡像を『デカルト座標的に』あるいは『物理学的に』『宇宙論的に』見ていません。『回転座標的に』あるいは『生物学的に』『環境論的に』見ているのです。」
「いぜれにせよ、やはり結局は、左右にまつわる問題に回答するためには、『空間とはそもそも何か』という空間の『本質』についての考察が求められることとなるでしょう。」 |