海洋空間佳本


文字渦 文字渦」★★★★☆
円城塔
新潮社

2019.8.12 記
漫然と読んでいたらうっかりすると自分の立ち位置が分からなくなってしまうような、読み手にも相当の集中を要求する複雑怪奇な連作集だ。
まず文字を擬生物に見立てたパッケージがピンとくるまでに、特に円城塔氏の他作あるいは周辺のSF作品にもし免疫がなければ、少々時間が掛かるだろう。
カンブリア大爆発やら犬神家の一族やらインベーダーゲーム? やら、ジャンル無視のパロディが繰り広げられる一方で、筆で紙に書かれていた時代の文字とデジタル入力してディスプレイに表示される文字との根元的な違いに関する考察が練達の技で描かれていたりと、まさに硬軟何でもありの思考が存分に踊りまくっている。
表現に語弊はあるが、これはどこかで頭がおかしくないと書けない作品であることは間違いない、もちろん誉め言葉。





戻る

表紙