氏の著作としてはいささか異色とも言える、探偵物の連作。
ホームズ&ワトソンのように輪郭は鮮明ではないがバディっぽい枠組みが敷かれ、津原泰水氏の伯爵ものや道尾秀介氏の真備ものを脳内で少し重ね合わせてみたり。
と同時に、皆川博子氏が実に多作だということが改めてよく分かる。
人形の五郎の存在意義が、その出自や役割含めピンと来ず、そこは少し残念。
PART 2として収録された"変相能楽集"は、戯作の脚本のような体裁の台詞回しが小気味良いリズムで綴られ、軽やかかつ鮮やかに時代を超越する物語と相まって、日本語に備わる魅力を存分に味わうことができる。
古川日出男氏もひょっとしてここに耽溺したのでは? などと夢想するのは突飛がなさ過ぎか。
神話の時代の物語を礎に、現代と薄気味悪く調合した前衛演劇の如き「冬の宴」が強く印象に残る。 |