「
皆川博子コレクション3
」★★★★☆
皆川博子
出版芸術社
2021.8.15 記
"ここにいる人たちは、皆、一つの世界しか知らないのだろうか。重なって存在する荒野を知らないのだろうか"
表題作では、精神世界を題材に採り、著者と父親の実際の関係性なども織り交ぜながら、余韻の深い物語に仕上げられている。
近年の練度が高い作品群と比べれば粗さが感じられるが、表題作の後に収められた短編も含め、人間の裡に潜む暗部を様々な手法で白日の下に曝け出す技術は、デビュー時から徹頭徹尾、巧み過ぎる。