海洋空間佳本


皆川博子長篇推理コレクション1 皆川博子長篇推理コレクション1」★★★★☆
皆川博子
柏書房

2021.4.6 記
奇しくも、活気溢れる土着的な祭りを入口とする物語2編が並び、ともに冒頭からその風景とざわめきが脳裏に鮮やかに浮かぶ。
そしてこれもともに、昭和の日本を味わい深く描き出す古き佳き時代のサスペンス、といった趣きをいっぱいに湛えている。
登場人物たちの血縁・親戚・姻戚関係がやたら複雑というのも、ある意味でこの時代特有のやや歪な熱気を彷彿とさせるような。
肝心のロジックにおいても、「虹の悲劇」では、現代とはツールこそ違えど作動の原理を同じくする、いわゆる匿名の群衆による悪意を上手く用いているし、「霧の悲劇」で、岩佐徳衛の口を借りて語られる反戦主張に込められた強烈な皮肉を目にすると、令和の世に生きる我々もガツンと頭を殴られたような気がするだろう。





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