海洋空間佳本


なぜ鏡は左右だけ反転させるのか 教養しての犬」★★★★☆
富田園子
西東社

2024.8.19 記
全体として表面上をさらりとなぞった豆知識の羅列というスタイルではあるが、犬と人間の歴史にまつわる話や、犬種と遺伝に関する説明等は、充分に説得力があり、読み応えがある。
実際に犬と暮らしていると、五感を始めとする身体能力に舌を巻いたり知能の高さを思い知って感服したりする経験を日々の生活の中で多々味わうが、それらを裏付ける傍証となる事例がたくさん。
一般的に体が大きな動物の方が長命だが、同じ種の中に限っては逆になるとか、人間が失ってしまった地磁気を感知する能力があるのではないかという考察とか、銃が発明され狩猟の形が変わるとともに新しいタイプの猟犬が作出されたとか、縄文型と弥生型の分布図はまさしく人間と同じとかいったトピックスがとりわけ印象に残った。
ただ、「犬はしっぽをバランサーとして使っていない」という主張にはまったく首肯できなかった、経験則として。
疾走しながらコーナーを曲がる時など、尾を使ってどれほどバランスを取っていることか。





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