登場人物が携帯電話を持っておらず公衆電話を常用しているあたりや、ファミコン、なんて単語が出てくることを除けば、これが今から18年前の1989年に初出版された小説だとは到底思われない!
“K2”の具体的描写、科学的見地からの表現、それから全体を覆う文体、どれをとっても2000年代に執筆されたと言われても何ら疑わしくはない。
すごすぎる。
無論それだけではなく、ストーリー展開も紛れもなく名人芸の域。
息をつかせぬ怒涛の勢いで物語は疾走し、よくよく考えたらかなりマンガチックでB級映画チックな設定に違和感を覚えるなどということもまったくないままに、一晩で最後のページまで読み終えてしまった。
これがあるからレトロスペクティヴには大きな意義がある。 |