音に聞こえていた通り、言葉のドライヴ感は心地いい。
ひょっとしたら町田康氏や樋口毅宏氏なんかを意識させる文体を組み上げつつ、ミステリーの味付けも加えられて物語は疾走する。
これはちょっとクセになりそうな作家かもな、なんて思いながら読み進んでいたが、中盤を過ぎ、収束に向けた展開に入り込んだあたりで若干トーンは失速。
大団円どころか、ともすればちょっと破綻? なんて疑ってしまうほど乱れた。
壊れているけどなぜか収まっている美しいカオス、でもなくて、ちょっと残念。
目に見える表層的な修飾は充分に個性的で魅力もあるが、肝心の骨格がやや脆弱に感じられた。
とはいえ既に10年も前に出版された著者のデビュー作であるからこれは、以後の著作にも着目してみたいと思う。 |