海洋空間佳本


警視庁生きものがかり 警視庁生きものがかり」★★★★☆
福原秀一郎
講談社

2018.1.11 記
最近、小説を原作とする同名ドラマがあったので、これもてっきりその関連本かと思ったら、出版は放送後のようだがどうやら関係はないらしい。

主に希少生物の密輸や不正売買にまつわる捜査の経験の数々が綴られており、生き物好きの端くれとしては読み応えがあった。
被疑者たちはすべて仮名で書かれているが、ああこの犯人は多分あの人だなあ、等と推察しながら、またそれも踏まえて後半を読んでいくとさらに面白い。
まあ生き物の命に拘わるとはいえ、決して凶悪事件とは言えないこの種の犯罪を、前例がない中で検挙実績を積んでいくのは本当に大変だったろう。
まさしく一芸に秀でた捜査員だからこそ成せた業だとは思うが、やはりどんな仕事や組織であっても、結局最後に機能するのは"人"であり、決して構築されたシステムではないんだなあ、ということも同時に感じた。
いくらスキームが同じであっても、良くも悪くも属人的要素を排除して考察することはできない。
また、ちょっとユーモラスにさえ感じられる著者と被疑者たちとのやりとり等からは、ちんけな犯罪者といえども高度な知識と工夫を駆使して事を運ぼうとしているんだなあ、ということも分かって妙な感心も。
だけどちょっと手口の説明が詳し過ぎて、これを参考に悪事を企てようとする輩も出てくるのでは…?! と要らぬ心配までしてしまった。





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