"八咫烏シリーズ"と呼ばれるものに知らず手を伸ばしてしまっていたようだ。
建て付けはライトノヴェルだが、プロットはなかなかどうして骨太のミステリー仕立て。
中盤過ぎまでは興味を削がれることなくほぼ一気に読んでいくことができたが、若宮の唐突過ぎる登場以降、若干空気が変わり、そこから披瀝される京極堂ばりの謎解きは細部の理論構築が甘いため、読む側がかなりの程度、脳内で事情を補完せねばならず、それが少ししんどくなった。
個人的にはあまりに苛烈ないじめの描写などは、創作と分かっていても読んでいると気が重くなるので以下は特に不満なポイントというわけではないが、いわゆる"大奥もの"としては、姫たちが意外とかわいらしくて、その嫌がらせも微笑ましい程度のレヴェルに留まっているのが、あるいは物足りないと感じられる向きがあるかも。
ただ、姫付きの女房たちの方がよほど恐ろしいか。
おそらくこんな話ではなかったと思うが、知る人ぞ知る平松伸二氏の「今源氏物語」をなぜか読みながら想起した。 |