夢と現。
いわゆる「胡蝶の夢」的な主題を据えた物語。
誰しもが哲学者である少年少女だった時代に一度は思い至るであろう、普遍的かつ、個人的にも好きなテーマだ。
文章は上手い。
構成力も確かで、とにかく抜群のリーダビリティを有する。
読了後によくよく考えてみれば、ああ、あれはちゃんと伏線になっていたんだな、と腑に落ちる網の張り方にも感心する。
すべてが整合し、閉じられるべきところに収斂するのだろうと思われた矢先のエンディングで、ドカンとちゃぶ台をひっくり返された気分だ。
終わらせ方が、私にはピンとこなかった。
ただ、この小説が持つ構造にふさわしい、読者を決して晴れない煙に巻く結末、と考えれば、それもいいのかも。 |