海洋空間佳本


看守の流儀 看守の流儀」★★★★★
城山真一
宝島社

2026.3.11 記
まさに世界がぐるりと反転するような大掛かりな舞台装置が終盤で作動するが、それに異物感を覚えるようなことは微塵もなく、見事にぴたりとはまって深い驚きと感動をもたらしてくれる。
ここまで"意味のある"叙述トリックは、なかなかないのではないか。
読了近くなり、これは凄い小説に出会うことができた…と我が身の幸運に感謝するばかり。

何人かの作家や彼らの手による警察小説が頭に思い浮かぶような硬質な空気が全編に満ち、ある種本格とも言える筆運びは実に巧み、するするとページを繰る手が止まらなくなるタイプの作品だ。
限られた紙幅の中でしかと"人間"を描ききっているので、例えば冒頭に収められた小編における源田と宗方の深夜の仮出所式に代表される要所要所のクライマックスで、きっちりと読者の感情を揺さぶってくる腕力もある。
そして連作を貫く縦糸、火石と三上の謎による引っ張り加減もまた絶妙。
途中、あるいは"これ必要だったかな…?"と首を傾げたくなったシーンも、最後まで読めばその有効性が腑に落ちる。

既刊の続編はもう少し先に読むことになるが、非常に楽しみにする一方で、今作がこれほどの大傑作なだけに、その円環の調和を崩すようなものになっていなければ良いな…というまったくもって余計なお世話の不安も一抹。
しかしきっとそれは杞憂に終わるだろう。





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