海洋空間佳本


スウィングしなけりゃ意味がない スウィングしなけりゃ意味がない」★★★★☆
佐藤亜紀
KADOKAWA

2019.6.30 記
第2次世界大戦前夜から戦中にかけ、いわゆる敵性音楽であるジャズに魅了されたドイツのティーンエイジャーたち、"スウィングボーイズ"の物語。
懇切丁寧なガイド付き小説とは違い、あれ、これについてなんか説明あったかな? とポヤポヤしているとあっという間に置いていかれそうな、まさしくインプロヴィゼーションが連なるジャズセッションのような作品で、その音楽的なリズムとテンポが読み進むうちにドンドン心地良くなってくる。
政治的思想は持たなかったと言われているスウィングボーイズだが、戦時下という特殊な状況だからこそ、純朴な魂が発する叫びには説得力が籠り、物語中盤、ベルゲドルフに収容されたエディが目にする数々の理不尽に対し「お前から逃れるまで、僕はお前のことを考える」と呼び掛けて締めるくだりに、それは凝縮されている。
どこにも偏移せず、ひたすら自分がかっこいいと感じるものだけを追い続けた彼らの価値観が嫌悪とともに爪弾きにしたようなものは、絶対的に間違っているのではないですか、ということだ。
まあこうして駄文を綴って分析するのも野暮の極みと思われる、どちらかというと右脳で味わうような作品かも。





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