もちろん明確なこれといった答えがあるわけではない問いには違いないが、"死"という普遍的なテーマに真っ向から取り組み、ある角度からの鋭利な切り込みを示した大作。
親子の情、男と女のそれ、あるいは友人間の絆…、人間関係の中で色々な形をとって表れる"愛"に関する考察は、読者の誰にでも当てはまるものだから、自ずと共感度合いは高まろう。
生々し過ぎて、肌がヒリヒリしてくるほどだ。
主人公の行動と思想には首肯できない部分もあるが、著者なりの一つの提示である、という風に納得はできる。
そしてすべての物語を結びに向けて収斂させていく筆遣いは無論、名人芸の域だ、上手い。
ラストシーンの描写が、ちょっと類型的になってしまっていたのが、やや残念。 |