海洋空間佳本


犬を殺すのは誰か 犬を殺すのは誰か」★★★★☆
太田匡彦
朝日新聞出版

2012.5.13 記
広範囲に取材はされているようだが、それぞれの取り扱いは思ったよりも浅めで、内容的なヴォリュームもそれほどではない。
が、動物好きならずともおそらくは誰もがなんとなく嗅ぎとってはいるであろう、しかしなかなか直視しようとはしないペット流通を巡る闇の世界に明確に切り込んでいる。
売ったら仕舞い、と言わんばかりのペットショップのあり方。
本書で扱われている犬・猫ばかりではなく、アリゲーターガーがどこそこの川で見つかっただとか、在来種を駆逐しつつ蔓延る強力な外来生物たちが増殖した原因の一角にも、そうしたショップの姿勢が介在していることは明らかだ。
他にも、パピーミルやオークションといった、生体を売り物にする上では構造的に不可分な問題がつきまとうシステムが根強く残っていることも、この本は記述している。
店頭で売れ残った犬・猫や、無責任な飼い主たちが飼養を放棄した犬・猫が、まるで廃車をスクラップにするかのごとく、オートマティックに殺処分されている現状が間違いなくこの国にはある。
それも税金を使って。
売る側の良識の低さ、買う側の無思慮ぶり、そして商行為を規定する行政の立ち遅れ。
これらを鑑みるに、日本のペット業界はまだまだ恐ろしく未成熟であると断定せざるを得ない。





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