海洋空間佳本


犬と、走る 犬と、走る」★★★★☆
本多有香
集英社

2018.8.29 記
一度きりの人生、やりたいことだけやって好きなように生きていこう、と思うのは簡単だが、それを実行に移すことができる人は世の中にほとんどいない。
その中で、「犬ぞりレースがしたい」という、まさに自分の思い描く夢に向かって、時に浅薄と評されるかもしれない恐るべき突進力で以て疾走していく著者の生き様は、実に爽快かつ痛快に過ぎる。
構成や文章もエンターテインメントとして非常に読みやすく作られており、チームで相当練り込んだであろうことが想像できる。
ただ、大きく引っ掛かったのが、最初のユーコンクエスト挑戦に至る過程の描写がまったくなかったこと。
そこまでは1つ1つの著者が踏んでいったステップが具体的な苦労話とともにしっかり語られ、それがとても面白くてストレスなく一気に読み進められたんだが…。
何か書き記せない壮絶な事情があったのか、それとも…と要らぬ邪推までしてしまう。
あとは端々に、個人の実名などを出して自分が不利益を被った出来事をちょいちょいアピールするのが少しだけ気になった。
全般的には、繰り返すが大変読み応えのある記録だし、また資料的な価値も充分ある一冊だと思う。





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