帯に惹かれて購入。
確かにステレオタイプの三島由紀夫のイメージとは違う、ちょっと軽薄で読みやすい娯楽小説だ。
2015年の現代の作品と比べると、プロットの複雑さは比較にはならないが、当初は生きることに倦み、命を失うことに微塵も恐れを抱いていなかった主人公が、色々と奇妙な出来事を経験していくうちに、生への執着を取り戻していく過程がヴィヴィッドに描かれていて、単純に面白い。
なんと当時、週刊プレイボーイに連載されていたということで、ゴルゴ13ばりに次々と主人公が女性と関係を持っていくというのも、相当に俗っぽい。
周知のように、最期は壮絶な自死を遂げてしまう三島由紀夫だが、その決断と行為に至るまでの彼の心理の道筋は、私たちには分からない。
解説文で種村季弘氏が書いているように、文学として重たい作品ではないが、実はこの種の小説にこそ、三島由紀夫の本音が紛れ込まされていたのかもしれない。 |