マスコミや世論によって、ステレオタイプな凶悪犯としてのイメージが形成された死刑囚の若い女。 その過去を紐解いていくことによって、虚像と実像のギャップを埋めていく作品…、というのが極めて表層的な捉え方であり、抜群のリーダビリティを備えているのでズイズイと一気に読み進められる。 その構成に衒奇的なところはほとんどなく、小説を読み慣れていればあるいは第五章あたりで、締めに至る大まかな流れは予見可能でもあろう。 ある意味で主人公以外の登場人物や読者にとって悲劇的とも言える結末を含め、「ああ、読み易くて普通に面白い小説だったなあ」というのが読了後の私の感想で、つまり特に個性的で傑出した感銘を残す作品と感じたわけではなかったのだが、辻村深月氏の文庫版解説を読んで、ガーンと目を覚まされた思い。 まさしくその通りだ。 「死ぬために生きようとする姿」という表現の本当の意味を慮ることなく、スッと看過してしまった自らの読み手としての甚だしい落ち度に気付く。 そのことに思い至った前と後で、この作品の存在の重さはガラリと変わった。 |