「鴨川ホルモー」を始め、万城目学氏の作品はどれも、舞台設定だけを聞くとどうにも大外れしそうな、ともすれば出来損ないのナンセンスギャグに陥ってしまうんじゃないか、というちょっとした危惧を抱かせてしまいがちだと思うんだけど、結果として決してそうはならずに、グイッと惹きつけたまま書ききってしまう豪腕ぶりはさすが、と毎度感服する。
京都、奈良、大阪と来た後は、京都に住んでいた者にとっては馴染み深い琵琶湖を舞台に持ってきた。 そして冒頭述べたように、いつもの如くマンガチックな縛りの中で、今回は友情をテーマにした青春小説としても1本、太い骨が通っている印象。 源爺の描き方も実に巧みで、バッチリ感情移入させられる。
オチはどちらかといえば類型的なパターンに落とし込まれているので、そこは万城目氏ならばもう少し違う形で勝負してほしかった、というのがささやかな不満。 あと、ストーリー全体を通しても、水一滴すら漏らさぬ隙のない構成、というわけではなく、筆の勢いに隠されてしまっている綻びや、消化しきれていない要素がいくつか感じられた。 |