海洋空間佳本


火群のごとく 火群のごとく」★★★★★
あさのあつこ
文藝春秋

2010.8.25 記
少年たちが言葉や心をやりとりする様、経験を乗り越えて長じていく様は、まるっきり「バッテリー」。
ただ決定的に違うのはその物理的な紙副の差であって、これだけの限られた文字数で語りきるにはとても追いつかない、そんな物語だと感じた。
もっと丁寧に濃密に、技を凝らして綴り上げた、遠大な小説の形で読みたかった気もする。
ということはつまり、それほどまでに面白いということ。
クライマックス、林弥が闇に潜む敵を斬るシーンについてだけは、どうしてもやっつけのような、雑な描写であるという感想が未だに残っているのだが、その後に続くエンディング、物語の締めとなる場面があまりにも美しいので、読後感は爽快極まりなかった。





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