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「火のないところに煙は」★★★★☆
芦沢央
新潮社
2024.9.29 記 |
まずは、やり過ぎず物足りなさもなく、ちょうど良い塩梅の実話怪談風小説だな、という印象。
いわゆるモキュメンタリー的な縦軸にミステリーの味付けを絡める手法もさることながら、各話をきっちりパターンに落とし込んでいく仕立ても読んでいて心地良く、安心感を覚えるほど。
そして最終話での大まとめ、一見まったく関係がなさそうなそれぞれのエピソードを外科手術で血管を吻合するが如く悉く結び付け、破綻のない連環を作り出す手腕は多少の強引さを感じる部分もあるけれども、唯々見事。
怪異、と括られる一つ一つも、かつては人であった。 |
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