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「蜩ノ記」★★★★☆
葉室麟
祥伝社
2014.6.7 記 |
藤沢周平ほどあっさりはしていないが、池波正太郎ほどこってりでもない、そんな塩梅で味付けがなされた、"武士の世界"。 現代に生きる軟弱な私どもには到底思い及ばない、不自由ではあるけれども清廉で高潔な武士たちの生き様が、鮮やかに描ききられている。 あまりに不器用極まりない戸田秋谷だけは何とかもう少し融通利かったんか…と思うほど。 ミステリーっぽいアレンジが若干施されているのも、物語に厚みを増している。
中根兵右衛門の、悪でありながら気骨を見せる終盤の姿には、武論尊/原哲夫作品に通じる空気を感じてしまった。 |
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