本来、生者であるべき語り手や登場人物が実は…という類型が前半までにいくつか続き、編者の遊び心かな、などと思いを馳せはしたが、正直そこまで盛り上がらず。
が、中盤以降で勢いが俄然増していき、傑作集の名にふさわしい名短編の連続に嘆息し、残りページが減っていく様に寂しさを覚えていった。
「風の古道」をほんのり彷彿とさせる恒川光太郎氏の「風天孔参り」、一見ふざけ過ぎのようでありつつ文学性をも備えた藤野可織氏の「アイデンティティ」、こっちの才能も凄いのかと脱帽させられた舞城王太郎氏の「深夜百太郎」、山奥を舞台とし民俗ホラーの雰囲気たっぷりの諏訪哲史氏の「修那羅」に宇佐美まこと氏の「みどりの吐息」(こちらは展開が相当強引ではあるけれども笑)、そしてまさしく平成30年間の掉尾を飾るにふさわしい澤村伊智氏の「鬼のうみたりければ」…、東雅夫氏、渾身の選と言っていいだろう。 |