平成、という時代を切り取って振り返る各分野での企画に関して、これまで意義を見出したことはあまりなかったが、このアンソロジーも2冊目に入りいざ通読してみると、世紀末から新世紀に至るあの時代の空気を色濃く反映し、それを読者に想起させる仕上がりになっていると感じた。
特に「リング」シリーズに内包される「空に浮かぶ棺」や、「ぼっけえ、きょうてえ」を引っ提げて文壇に降臨した当時の岩井志麻子氏のどす黒いパワーが漲る「乞食柱」、「幽」が元気だった頃に誌上で活躍していた作家群の作品などに、そうしたノスタルジーを覚えた向きは私以外にも少なからずいるのではないだろうか。
いずれにせよ、こちらも編者の志向が強く表れた一冊である。 |