「
八甲田山死の彷徨
」★★★★☆
新田次郎
新潮社
2011.12.2 記
史実に基づくフィクション、とのことだが、刊行から40年経つ今尚、凄まじいほどに濃密な内容に圧倒される。
非常に淡々と、抑制された描写ながら、厳寒の雪中行軍という極限状態の様のみならず、当時の日本軍内外に蔓延していたであろう空気のようなものが、ヴィヴィッドに伝わってくる。
読み手の想像力を刺激し、それを最大限働かせようとする力が、この作品には詰まっている。