海洋空間佳本


永遠の仔(上)永遠の仔(下) 永遠の仔(上)」「永遠の仔(下)
★★★★☆
天童荒太
幻冬舎

2011.2.21 記
大作。

上巻を読んでいるあたりでは、これでは動機があまりにも抽象的で弱いのではないか、精神世界の問題に逃げ込むことなくどう全体として整合性を保つんだろうか…、と訝しんでいたのだが、まったくの杞憂に終わった。
至極真っ当な剛力でもって、物語は見事に纏め上げられている。

様々な登場人物たちの身を借り、異口同音に語られる著者の人生観。
小説という形をとってはいるが、換言すれば、分かりやすい言葉に翻訳された哲学書、という一面もあるのかもしれない。

病因を自己の外、社会や家族などに求めることはあまりに安易だが、その段階で留まってしまうことは絶対にありうべきことである、と私は読み取った。





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