折しもロシアのウクライナ侵攻があったタイミングと近い刊行であったため、そちらの観点からも注目を集めた作品だが、そのあたりに絡む旧ソ連周りの情勢を描いた話ではなく、読了して何より強く感じたのは、まさしく"女性の物語"であった、ということ。
つまり、有り体に現在喧しいSDGsの目標になぞらえるならば、"ジェンダー平等"こそが親密なトピックスと言えようか。
そのテーマを表現するツールとして、第2次世界大戦時下にあるソ連の体制や、女性だけの狙撃部隊、等の装置が上手く組み込まれている、という印象。
全編を通して概ね筆致は硬質だが、例えば主要人物たちのダイアローグのシーン等で突如、誤解を恐れずに言うならばいわゆるライトノヴェルっぽい表情が垣間見えることがあるのが、個人的には引っ掛かった。
また、実は冒頭、セラフィマが故郷の村を襲撃され、イリーナに拾われることになる下りを描いた部分でも気になったのだが、決してステレオタイプに括る意図はないものの、一般的にデジタルネイティヴと呼ばれる世代以降の書き手によく見られる浅薄な表現が感じられたというか。
あるいは、シスターフッドがついに境界を越えて俗にいうところの"百合"に片足を突っ込んでしまったり…。
宝塚歌劇の演題になったら映えそうだ。 |