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「小さいおうち」★★★★☆
中島京子
文藝春秋
2010.8.16 記 |
懐かしい児童文学を思わせるような優しい語り口ながら、時にスリリングで読む者に緊張を強いさえするところがある。
であるから、ストーリーは一見平板で無害、何気ないものに見えながら、その実、仕掛けも外連味も込められた波瀾万丈の物語であったりする。
おそらくは綿密な取材に基づいているのだろう、時代考証も確かなことが伝わってくるので、違和感なく読み進められ、そして時には初めて知る些細な史実に感動する。
ラストを締めくくる最終章は、まあ美しくきれいにまとめられてはいるけれど、帽子を脱いで平伏するほどではないかな、主観として。 |
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