「"普通"の若者である自分がジロ・デ・イタリアを完走…」ということをやたら強調されているが、例え血のにじむような努力をしても本当に"普通"の人は決してグランツールを完走することはできないだろうし、そもそもプロコンチームに入ることさえできないだろうから、あまりそこを前面に出されると鼻白んでしまう。
肝心の中身の方は、しかしとても面白い。
元々が山本元喜選手のブログを土台にしているというから、余計な脱線や誇張や修飾なしに(プロトン、グルペット等のロードレース専門用語の説明や、出力ワット数の解説すらない)ジロの日々がリアルかつ克明に描かれ、選手はこんな風に感じているのか、レース展開はこんな風に決まっていくのか、といった内部世界が垣間見えて非常に興味深い。
そして著者が自分を"普通"だと感じてしまうほど、周りは超人揃いなのだということが、直接的な描写はないにも拘らずよく分かったりする。
小さな日本人がヨーロッパに渡り、グランツール出場に至るまでの生活がどうだったのか、という過程の奮闘にもとても関心はあるが、この本においてはそこをすっ飛ばし、あくまでステージレースの期間だけに限っているのも奏功していると思う。
あと、同じ選手の呼称がファーストネームになったりラストネームになったりするのはまったくもっていただけない。
書き手の責任もさることながら、ここは編集が仕事をしなければ。 |