海洋空間佳本


ブラックボックス ブラックボックス」★★★★☆
篠田節子
朝日新聞出版

2013.10.21 記
独立系の小出版社ではなく、よくこんな内容の連載を「週刊朝日」でできたものだ。
ところどころに見られるやや不自然な表現や若干強引な展開、結末の慌ただしい閉じ方などが気になったが、おそらく文庫化の際にはある程度ブラッシュアップされるだろう。

どのあたりまでが実情、実際の雰囲気に近いのかは分からないが、さもありなん、と深く首肯させられてしまうようなリアリティーをこの作品は持っている。
実際、生活している中において、不自然に発色が良過ぎる加工食品、鮮やかな色合いと形状がまるで工業製品のように画一的な野菜や果物、数日経っても瑞々しいままに見えるカップサラダ、異常に賞味期限が長い飲食物、カロリーゼロが謳い文句の謎の人工甘味料、喉の渇きが尋常でないほど味の濃い調味料などなど、得体の知れない不可解なモノに漠然とした不安を感じることは少なくない。
現代はあらゆる分野において二極化が進んでいる時代だと思うが、健康を追求し、食の安全に注意を払う人たちの割合が明らかに増している今、とてもタイムリーな内容といえるだろう。
タイトルはちょっと分かりにくいかも。
本当に幅の広い作家だ。





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