海洋空間佳本


バトル・ロワイアル バトル・ロワイアル」★★★★★
高見広春
太田出版

2005.8.25 記
こんな話、現実にありえるわけないじゃん、という点では典型的な“マンガ”本なわけだが、そこには“フィクションとしてのリアリティ”が圧倒的なまでに備わっているから、途中で飽きることも冷めることもなく読みきることができる。
いかにも現実に起こりえそうなストーリーを書いているのに半ばで放り出したくなる小説も少なくない中、それはやっぱり筆力、ということになるのだろう。

どうしようもなく陰鬱で凄惨で絶望的、限りなく救いようのない雰囲気いっぱいでずっと物語は進み、それでも途中でひょっとしたら一条の光明か、なんて要素もまぶされながら、でもそれもやっぱりとてつもなく微小な風前の灯だったわけで、こりゃどうなるんだろう? という具合。
そしてやっぱり救いも希望も未来も何にもないような、いやもしかしたらこれこそが明るい未来への第一歩なのか、要するになんだかよく分からない、狐につままれたようなラストシーンは、決してスッキリハッキリとした読後感はもたらさないけれど、だからといって胸や脳味噌の中にいつまでもモヤモヤがわだかまっているかのようなキレの悪い幕切れでもない、というところがとどのつまりはいい作品なんだろうと思う。





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