著者の実生活をモデルに描かれた小説とのこと。
これまでも、同種のキャラクターを登場させた実体験ベースの作品を出されているようだが、私にとってはこれが初めての佐藤愛子氏の著作。
まず驚くのは、実に齢90をまたいでこの作品を書かれたということ。
構成的には込み入ったものではなく、述懐風の文章なので、ド級のミステリーを仕上げてしまう皆川博子氏から受けた衝撃には若干届かないかもしれないが、それにしてもこれだけのヴォリュームに達する半生記を綴るエネルギーは凄い。
90年以上生きているその著者が、人間というものは分からない、他人はおろか自分のことだって分からない、と仰っているのだから、それは真理なのだろう。
人とコミュニケーションを取るということは、古今東西問わず、本当に至難なのだ。
これぞ文学。 |