少なくとも私の基準の中では、"ホラー"、という要素は微塵も感じられないので、受賞に限って言えば、それがふさわしいかと訊かれると甚だ疑問だが、とても"上手い"小説であることは間違いない。
"遺工師"なる架空の職業を創り上げ、出てくるキャラクターはブッ飛びまくり、そして思わず顔をしかめてしまうドぎついスプラッター描写がてんこ盛り、と、これだけ見ればどこにも着地できない迷い子になってしまってもおかしくない設定だが、そこにきっちり家族の絆といったベタなドラマも放り込みながら、作品として見事に昇華させている。
死体をバラしていく工程のディテールなんかはどうやって取材したんだろう…、と気になったり。
ただラストは個人的にはちょっとやり過ぎたんじゃないか、という感がある。
締めに向けてインパクトを重視したい気持ちも分からないではないが、もっと抑制を効かせた展開の方が読後感は厚くなったのではないだろうか。
文庫版解説の平山夢明氏はなんだかピッタリ。
1つ、細かいことだが保釈に関する記述で明らかな事実誤認があるのが気になり、残念。
単行本ならまだしも、文庫にするなら誰か気付かないと。 |