海洋空間佳本


アルプスを越えろ! 激走100マイル アルプスを越えろ! 激走100マイル」★★★★☆
鏑木毅
新潮社

2013.3.23 記
恐らくは口述筆記であろう、2時間も掛からずにサラリと読めるソフトカヴァーだが、その実、内容はすこぶる濃い。
挫折の連続だったという学生時代を経て公務員になり、県庁職員として働きながらトップトレイルランナーに上り詰めた日々。
世界最高峰クラスのレースであるウルトラトレイル・デュ・モンブランへ繰り返しアタックした、その壮絶な戦いの様子。
そして日本初の100マイル山岳レースとなる、ウルトラトレイル・マウントフジを立ち上げて成功に導くまでの苦闘に満ちた流れ。
それぞれのトピックスだけで本を1冊ずつ書けるんじゃないか、と思われ、これらをすべて本書に詰め込んでいるのがもったいないとすら感じる。
どのような分野においても、努力と行動によって道を切り拓いてきた第一人者の言葉は重く、そして興味深い。
私たちのような常人からすると、大変な偉業に思われるような事柄が、どれも本当に何でもないことのようにサラッと綴られているから、まったく恐れ入る。
と同時に、ご本人がいくら、大して才能に恵まれているわけではない、と自身のことを評され、実際に本音でそう思っていらっしゃったとしても、やっぱり天から授けられた特別なギフトを備えているんだなあこういう人は、と読者は思い知るより他にない。





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