第一部、二部、三部と追うにつれて、あたかもカメレオンの体色かのように物語の帯びるトーンが微妙に変わっていく様が面白く、また少々不思議な読書体験でもある。 アレックス、カミーユを始め、ル・グエン、ルイ、アルマンといった主要登場人物たちの書き分けも見事で、充分に個性的かつ魅力的なキャラクターとして活動している。 椅子から転げ落ちるほどの衝撃は受けないまでも、ミステリー作品として非常にアトラクティヴなプロットで、また訳文も実にスムーズで読みやすい。 高水準のエンターテインメント小説といえる。 反目し合っていたカミーユとヴィダールが奇しくも一致を見た、"真実よりも正義"を優先したラストシーンについては賛否が分かれることだろう。 |