海洋空間ユカリンの一言



第7回 水族館   2003.10.11


先日、珍しく夫が土日休みだったので(といっても正確には日曜夕方から仕事でしたが)、
二人で三重県の伊勢志摩に行って来ました。
旅行の目的は、水族館と大浴場。
私は、水族館が特に好きな方ではなかったのですが、
夫と一緒に行くようになってようやくその楽しさが解るようになってきました。

夫は大の魚好きで、たまに一緒にスーパーに行くと、
必ず魚売り場を丹念に見て回るのです。
私は魚の生臭いにおいが嫌いなので、
これまでは必要最小限しか魚売り場には足を運ばなかったのですが、
今では夫の『これ見て!すごい!』という言葉に呼ばれて少し滞在時間が長くなりました。
ちなみに近所に24時間営業の激安スーパーがあるのですが、
そこには高級魚がビックリするような安値で売られていたり、
今まであまりお目にかかったことのないような深海魚がおいてあったりするので、
特に夫はお気に入りのようです。

話は戻って、伊勢志摩旅行の初日は、志摩マリンランドという水族館へ行きました。
そこは規模が小さくて、普通に見て回ったら1時間もあれば充分なくらいですが、
私たちは気が付いたら2時間半もの間楽しんでいました。

入り口のゲートをくぐると、まずはたくさんのペンギンたちが建物の外でお出迎え。
あいにくこの日は雨だったので、さっと眺めて建物の中に入りました。

順路に沿ってまずは『古代水族館』へ。
ここでは、地球と生物の46億年の歴史が分かりやすく大きな絵やマンガ、
触れる化石コーナーなどで紹介されており、
オウムガイカブトガニなども展示されていました。
アメリカカブトガニ
以前の私ならさらっと流して見て5分もかからないだろうというところを、
夫が真剣にマンガを読んだり、絵をじっくり見ているのでそれと一緒に見ていると、
知らなかったことや驚くべき発見がたくさんあったりして、それなりに楽しめました。

夫は何を見るにも真剣な眼差しで、
あっ、ポリプテルスだ』とか『すげー、アリゲーターガーがいる』とか、
普通の人はあまり知らないような生き物の名前を、
名札を見ずに口にしながら楽しそうに観察していました。
これがポリプテルス(多鰭魚)
首からカメラを下げて、館内のご案内パンフレットを片手に
そうやって真剣に生き物を観察している夫の姿を少し離れたところから見ていると、
どんどん『オタク』に見えてきて我が夫ながら少々引いてしまいました。

このコーナーの終盤あたりに展示品と並んで、
ガラスケースの中に『三重で化石発見』を伝える
新聞記事の切抜きが展示されていたのですが、
夫はそれをものすごく読みたかったようで、

ガラスケースの存在を忘れて
すごい勢いでその新聞記事に頭を近づけた
のです。

次の瞬間『ゴーン』という大きな音が館内中に響き渡って、

夫はその新聞記事に近づけなかったショックのあまり、

目が点になっていました。


何が起こったのか理解し、頭が痛いということが分かったのは数秒後のようです。
私はちょうどすぐそばから夫を見ていたので、
あまりの面白さに涙が出て腰が痛くなるほど笑ってしまいました。
今までガラスケースの存在を認識しながら展示品を見てきたのに、
どうしてその時だけ急にその存在を忘れてしまったんだろう…。
とってもその記事が読みたかったんだなぁ、その気持ちは充分伝わってきました。

次は、『ウミガメの水槽』。
もちろん夫は写真を撮り、じっくり観察。
隣で私もじっくり観察。
そんなひと時、夫は私にカメラを渡して、
自分はウミガメの水槽の手前に置いてあった大きな作り物のカメの乗り物に乗り込み、
とびっきりの笑顔で『早く撮って』。
もうすぐ30歳…
この時私は、夫ではなく元気な小学生と一緒に来てたんだっけ!?ってカンジ…。

ようやく『水族館本館』。
ここには、熱帯魚・珍魚・怪魚などいろんな種類の魚がいるのですが、
夫が写真を撮ったのはウツボデンキウナギヒトデなどばかりで、
なぜか綺麗な熱帯魚にはまったく興味がないのです。
なので、家のアルバムには時折、気持ち悪い生き物だらけのページが結構あります。

それから、ブリサメなど50種2000尾の魚が泳ぐという『回遊水槽』へ。
到着して間もなく、
海女による餌付けの実演が行われます』というアナウンスがあったので、
ベンチに座ってしばし水槽を観察。
夫はここになら何時間でも座っていられる、ってな雰囲気。
結構お客さんが集まったところで、海女さんが水槽に現れエサを取り出すと、
すごい勢いで大きな魚たちが海女さんを取り囲んでしまい
その姿は見えなくなってしまいました。
海女さんがエサをあげてるところを撮ろうとカメラを構えて待っていた夫は、
どうやっても大量の魚たちしかファインダーに入らなかったらしく、
シャッターを押すのは諦めてその様子をじっくり観察していました。
私もここでは『すごいものが見れたなぁ』とちょっと興奮気味。

最後にたどり着いたのがここの水族館のメイン『マンボウ館』なんですが、
着いた直後に『ペンギンの餌付けが始まります』というアナウンス。
入り口ゲートをくぐってすぐのところにいたペンギンたちです。
夫は『もちろん行くよな』という目をして(言葉ではなく目だけです)私の方を一瞬見て、
まるで競歩選手のように一目散に順路を逆走し始めました。
私も置いていかれないように早足でついて行くのに必死。
無事ペンギンの餌付け開始に間に合い、
かわいいペンギンたちが飼育係のお姉さんから
エサの小魚をもらうところを見ることができました
(この時も雨が降っていたので、夫がダッシュで車のトランクに積んであった傘を取って来てくれ、
傘をさしながらの最前列観察)。
ペンギン園の中にはペンギン用の滑り台が置いてあり、
エサに釣られて階段を登ったけれど上手に魚をもらうことができずに
そのまま滑り落ちていってしまうペンギンや、
エサ欲しさにお姉さんの足をつついてお姉さんに蹴られるといった間抜けなペンギンもいて、
とても愉快でした。
魚をくわえて滑っていくペンギン

ペンギンの餌付けを最後まで見て、再び『マンボウ館』へ。
ここではマンボウの姿よりもその水槽の水がかなり汚れていたことが印象的で、
この水族館で一番の人気者のはずなのにあの待遇はちょっと酷いのでは…と。
ちなみにこのコーナーで夫がカメラに収めたのは、96本の腕を持つ奇形タコの標本と
サケガシラという白くて大きな(3メートルもある)気持ち悪い深海魚のホルマリン漬け…。
大きなサケガシラ

こうして私たちは志摩マリンランドを満喫して、
この日宿泊予定の伊勢志摩ロイヤルホテルへ向かいました。
ここの系列のホテルは夫が勤めている会社が法人契約をしているので、
格安で泊まることができるのです。
ホテルに到着後チェックインを済ませ、館内を少し見学してから
本日のお楽しみ第二弾の大浴場へ浴衣に着替えて向かったのです。
ここは温泉ではないのですが、露天の大きな岩風呂があり夫も私も大満足でした。
大浴場の出入り口の前にゲームコーナーがあったので、そこで待ち合わせ。
ゲーム好きの夫はもちろん小銭を持ってきていて、風呂上りに1ゲーム楽しんでいました。

夕食は館内にある『ぶらり横丁』という一角にあるお店『潮騒』で、
鯛やサザエ、牛肉、野菜などがたっぷり入った鍋をいただきました。
海の近くなのでやっぱり魚介類がおいしかったです。
二人とも満腹になったので、部屋で一眠りしてから再度岩風呂を楽しむ予定だったのですが、
やっぱり結構疲れていたので、そのまま朝まで眠ってしまいました。

翌日曜日は夫が夕方から仕事だったので、
どこにも立ち寄らずに早めに帰ろうと言っていたのですが、
近くに鳥羽水族館があるのにそこを見ないで帰ることが
やはり夫にはとてももったいないと思えたらしく、チェックアウト後、
満面の笑みを浮かべて『鳥羽水族館に行こう!』と私に向かって言ったのでした。
ということで、鳥羽水族館へ出発。

鳥羽水族館は、昨日行った志摩マリンランドとは違い、規模が大きくお客さんも沢山。
入場券を買って館内に入り、まずは腹ごしらえと
どうやってこの広い館内を効率よく回ろうかという計画を立てるためにレストランへ。
この水族館はA〜Lという12の展示コーナーに分かれており、
特に順路は定められていなくて自由に観覧することができるのです。
昼食を食べながら、私は目の前のパノラマウィンドウに広がる海や近くの島に、
夫は館内の案内パンフレットに夢中でした。

まずはレストランのお隣『特別展示室』というコーナーで
リーフィー・シードラゴンという珍しいタツノオトシゴの仲間などを見て、
続いては『極地の海』でラッコイルカ
人魚の海』でジュゴンなどに会いました。
リーフィー・シードラゴン(葉のようなタツノオトシゴ)
ジュゴンって人魚伝説のモデル?ホント?全然似てないじゃん!というのが私の本音。
それにしてもどの水槽も大きくて綺麗で、昨日の志摩マリンランドとは全然違ったので、
なんだか昨日見た生き物たちが少しかわいそうになってきました。

そして屋外の『水の回廊』でビロードカワウソコブハクチョウを見ていたとき、
ふと隣の夫に目をやると、昨日同様首からカメラを下げて、
ポケットからは館内案内パンフを覗かせ、
一心不乱に携帯電話のメモに珍しい生き物の名前を記録しているその姿は、
昨日よりもはるかに『オタク』でした
携帯電話のカメラでコッソリ撮ったオタクの姿
そんな姿に改めて気付いた私は大爆笑。
夫はどうして笑うの?とでも言いたげなキョトンとした表情。
その後、いろんなところで立ち止まっては
真剣な眼差しで携帯にメモを取っている夫の姿が見られ、
その都度私は密かに笑っていました。

それからアマゾンに住む魚たちがいる『ジャングルワールド』、
その名の通り魚屋さんにいそうな魚たちがたくさんの『伊勢志摩の海・日本の海』、
チョウザメハイギョなどがいる『古代の海』をじっくりじっくり時間をかけて見たのですが、
サンゴ礁をイメージした『コーラルリーフダイビング』はサッと素通り
(やっぱり夫は綺麗な熱帯魚には興味がないようだ)。
『ジャングルワールド』にいたアジアアロワナ

それと前後して、ショースペース『パフォーマンス・スタジアム』に
アシカショーを見に行きました。
この日もあいにくの雨、一応屋根はあったのですが、
ところどころ雨漏りしていたので、少し濡れながらの観覧でした。
でも、沢山訓練を受けたであろうアシカくんたちの芸はとても上手で面白く、拍手喝采。
アシカショーの一コマ

昨日とは違い、人の多さと規模の大きさに少々疲れぎみの夫だったのですが、
通路から展示コーナーに一歩足を踏み入れると
目がキラキラ輝き始める
のです。
私はそんな夫のことも楽しく観察しながら『日本の川』へ。
ここは、現在失われつつある日本の水辺の自然を再現したコーナーで、
なんだか田舎に帰ったような気持ちになるところでした。
生き物を見やすいように展示しているのではなく、
自然を再現してそこに住んでいる生き物を探して観察するという感じだったので、
小さな生き物を見つけるのは結構大変でした。

ここで私は生き物を真剣に観察、撮影している夫を残してちょっとお手洗いに
そして数分後戻ってくると、どこにも夫の姿が見当たらないのです。

夫は『この辺で待ってる』って言ったのに、なんでいないの。
この展示コーナーを二度ぐるりと回っても見つからず、
まさか次の『森の水辺』コーナーが早く見たいからって先行ったの?
いやー、さすがに私を置いて行くなんてそんな酷いことはしないよな。
などと考えながらもう一度その辺りを探してみようとした瞬間、
なんだか見覚えのある背中がすごく低い位置に見えるではありませんか。

やっとのことで夫を発見

夫は、背の低い私の視界にも入らないくらいに小さくしゃがんでおり、
大きな水槽の下の方、ガラスにもうこれ以上近づけないというくらいピッタリ引っ付いて
何か生き物を探していたのです。
そんなに小さくなってたら小さな私でもなかなか見つけられないよ!
こんなんなってました
夫が見つかったことで一安心したとともに、
本能のままに生き物を探している夫の背中を見て、大爆笑。
そんな私の視線に気付いた夫は振り返り、私を見つけとても寂しそうな顔で
ドジョウが見つからない』と一言。
その言葉に再度大爆笑でした。

私はその笑いを引きずりながら最後のコーナー『森の水辺』へ。
ここには珍しい両生類、爬虫類などがいっぱいいました。
まず最初に見たのは、『ニャー』と鳴くその名もネコガエル
夫はこの小さなカエルを撮影することに夢中で、
ここでも水槽にピッタリとくっついていました。
この水槽の横には、
あらかじめ録音されたこのカエルの鳴き声が聞こえてくるスピーカーが置かれていて、
常に一定の間隔をあけて『ニャー』という鳴き声が流れるようになっていました。
しかし夫はカエルの撮影に夢中すぎて
この鳴き声に気付いていなかったようなのです。
カエルが小さすぎてなかなかピントが合わず、
撮影を断念した夫はようやく集中していた水槽から少し離れました。
その瞬間、スピーカーから結構大きな音量で流れている
『ニャー』という鳴き声が夫の耳に届き、
夫はその音に一人でビックリして肩を震わせ、一歩後ずさっていました
ずっと同じボリュームで同じ場所から鳴き声が流れていたのに、
あまりに水槽の中に集中しすぎていてその鳴き声に気付いていなかった夫、
その集中力に脱帽です。
それから、とても大きくて凶暴なワニガメや、見るからに毒々しいキオビヤドクガエル
大きな昆虫ツダナナフシなどを見て鳥羽水族館の生き物たちとお別れ、大阪へ。
ツダナナフシ

二日間で二つの水族館に赴き、夫はもちろん、私もすごく楽しめました。
いやー、水族館ってほんとおもしろいですよ。
特にうちの夫と行くと
水族館に行く人にはもれなく夫を貸し出しして
この楽しさを伝えたい
くらいです。
今まで私は水族館の生き物をじっくり見た経験はなかったので、
新たな発見に出会うことも少なく、
また、まるでガイドか何かのように
いろんな生き物の説明をこと細かくしてくれる人と一緒に行ったこともなかったので
(あんまりそんな人いないか)、
『水族館かぁ…』ってカンジだったのですが、今回で考えが変わりました。
それに、生き物を見るのと同じくらい夫を見るのも楽しかった。
人間って素の部分が一番面白いですね!

後日談。
この時撮影した写真をアルバムに入れながら
夫が生き物たちの名前をそこに書き込んでいる時、
一生懸命打ち込んだ携帯のメモを見なくてもスラスラ名前が出てくるのを見て、
私はその記憶力に再度脱帽しました。






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