海洋空間 NBA
スーパープレイヤー列伝


Player File No.4     2003.3.17 (2006.2.4 データ更新)



シャキール・オニール Shaquille O'neal シャキール・オニール

センター
216cm 153kg
1972年3月6日生
1992ドラフト1巡目1位指名
所属チーム:マイアミ・ヒート
出身校:ルイジアナ州立大
主なタイトル:ファイナルMVP3回
        2000シーズンMVP
        得点王2回
        オールNBA1stチーム7回
        オールスターMVP2回
        1993新人王
          …などなど



1990年代、2000年代のNBAを語る時、
恐らく永遠にこの男の存在を避けて通ることはできないだろう。
微塵の疑いなく現役最強のセンターであり、
50年を超えるNBAの歴史を紐解いても、
間違いなく五指には数えられるベストセンターである。

“モンスター・シャック”の異名を持ち、
学生時代から含めれば、その核爆弾のようなダンクシュート、
シャック・アタック”で破壊したゴール、バックボードは数え切れず。
216cm、153kgという巨体から生み出されるそのパワー
まさに人間離れ、モンスター級といえる。
ペイントゾーン*1で彼にボールを持たれたらもはや打つ手なし、
下手にディフェンスにいってケガをするよりも、
おとなしく“シャック・アタック”が通り過ぎるのを待つしかないのである。

しかもさらに厄介なことに、
ここ数年、特に初のチャンピオンシップを獲得した2000年あたりから、
シャックはその超人的パワーに加えて、
器用さも持ち合わせてきているのである。
それまでのシャックはどちらかというとテクニックという言葉とは無縁、
その圧倒的な体躯を生かしたパワープレイのみに頼ってNBAで戦ってきた。
それが今ではターンアラウンド*2からのフックショット*3
見事なパスフェイクにシュートフェイク、
ゴール下で充分にディフェンスを引きつけてからのパスアウトなど、
実に多彩なテクニックを身に着け、
ますますアンストッパブルな存在へと進化しているのだ。

彼がパワー一辺倒のプレイヤーから、
テクニックも併せ持ったプレイヤーに変貌を遂げたのには、
ある一つのきっかけがある。

ルーキーイヤーからその圧倒的な存在感と
卓越した得点能力でリーグでも傑出していたシャックは、
プロ入り2年目の1993〜1994シーズン、その年入団したゴールデンルーキー、
アンファニー・ペニー・ハーダウェイ*4とともに
当時所属していたオーランド・マジックをNBAファイナルまで導いた。
マイケル・ジョーダンが最初の3連覇を達成して
一度目の引退をしたシーズンでもあり、
“ネクスト・ブルズ”は若きシャック&ペニー率いるマジックか?
と注目を集めていた時だ。
このファイナルでシャックが対戦したのが、
西のチャンピオン、ヒューストン・ロケッツのスーパー・センター、
アキーム・オラジュワン*5だった。
この時、シャックはまるで赤子の手をひねるがごとく、
完膚なきまでにオラジュワンに叩き潰され、
チームも0勝4敗、スウィープという屈辱的な結果で
NBAチャンピオンの座を奪われたのである。

シャックを剛とするならば、このオラジュワンは柔のセンター、
圧倒的なパワーを持たない代わりに、
それを補って余りある豊富なテクニックをその身に着けていた。
ベースライン沿い、ターンアラウンドから放たれる正確無比かつ、
ブロック不能な打点の高いフェイドアウェイ・シュート*6
ドリーム・シェイク”と名付けられた、
とても7フッター(213cm以上)の選手の動きとは思えない、
その変幻自在なステップワークは文字通り無敵のテクニック、
モンスター・シャックをこれでもかと翻弄しまくっていた。
私も彼のプレイをテレビで見ながら、何度驚愕の叫び声を上げたことか。
それまでパワーで君臨してきたシャックが、パワーだけではダメなのだ
とこの時初めて自らの身をもって学んだことは想像に難くない。

そしてそれから6年後の2000年、
ついにパーフェクト・センターを目指すシャックの努力は実を結び、
NBAチャンピオンという最も輝いて目に見える形をとって現れたのだと思う。

そんな化け物プレイヤー、シャキール・オニールの唯一ともいえる弱点は、
フリースロー
その確率は、キャリア通算で何と53.7%(2003.2現在)、
彼のフィールドゴール・パーセンテージ*7よりも低い。
2002〜2003シーズンは多少の改善が見られるものの、
それでもようやく60%を超えた程度。
2本に1本しか決まらないのだ。
何というお粗末さ。
恐らく手があまりにもデカ過ぎるためだろう。
シャックがバスケットボールをつかんでいる様子は、
まるで普通の人がグレープフルーツをつかんでいるようなもの。
そのシュートがきれいなアーチを描けず、
回転がうまくかからないのも仕方ないのかも知れない。

でも考えたら他のビッグ・プレイヤーたちの中には
シュートの上手い人もたくさんいるなあ…。
まあ、一つぐらい欠点があるほうが愛嬌があっていいのかも?        






*1 ペイントゾーン…ゴール下からフリースローサークルにかけての、
   色が変わっている長方形(国際ルールでは台形)のエリアのこと。
   3秒ヴァイオレーションの対象となる地域。

*2 ターンアラウンド…ベースライン沿いで繰り出されることが多いステップワークの一種で、
   ゴールに背を向けた状態から90度回転して、ゴールに正対する動きのこと。

*3 フックショット…体の正面ではなく、左右どちらかの方向にリングが位置した状態で放つシュートで、
   片手で手首のスナップだけを利かせて放る。長身選手が撃つことが多い。

*4 アンファニー・ペニー・ハーダウェイ…NBA入り当初は“マジック・ジョンソン2世”の呼び声も高かった
   天才大型ガード・プレイヤー。そのポテンシャルはNBAでもトップクラスと言われているが、
   度重なる大きなケガによりここ数年は満足なシーズンを送れていない。
   2003年現在はフェニックス・サンズ所属。

*5 アキーム・オラジュワン…ナイジェリア出身のセンターで、ニックネームは“ザ・ドリーム”。
   本文中にもあるように、そのサイズをまったく感じさせないガード・プレイヤー顔負けのムーヴと
   超高確率のジャンプシュートを武器に1994年、95年とロケッツを連覇に導き、
   一時代を築き上げたプレイヤー。2002年引退。

*6 フェイドアウェイ・シュート…ディフェンス・プレイヤーのブロックを避けるため、
   真上ではなく後方に跳びながら撃つジャンプシュートのこと。非常に難度が高い。

*7 フィールドゴール・パーセンテージ…ゲーム中に放ったシュートのうち、決めることができた確率のこと。
   日本語でいうと、野投率。





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