海洋空間女であり過ぎた女の日常



第6回 もうひとつの指輪物語   2003.6.21



新オフィスに移り、今まで狭い三角部屋にいたオイラは、
オサレな環境にソワソワして落ち着かない。
それはきっと全社員がそうなんだろう。
部長(タバコ吸い仲間)がオイラの向かいの席にいる新社長のところへやって来て

「結婚指輪をみませんでしたか?」
「見てないですけど、なくされたんですか?」

「ええ。家の風呂場かなぁと思ったけど、無かったんですよ」

40まで独身だった彼は、やっと結婚した奥さんに頭が上がらなく、
風呂掃除、茶碗洗い、その他もろもろの決まり事を従順にやり抜いている、らしい。

「部長の車の中を捜して見ては・・・」と新社長。
そう、結婚指輪だもんなぁ。
なくしたら、家に帰ってからどんな風にシバカレルかと想像すると、
新社長も同情を禁じえないのだろう…。

「早く見つけた方がいいですよ。
アタシ結婚指輪をなくしてから3年後に離婚したんですよ〜。
きゃー、縁起わるー!!
」とオイラ。
新社長、ゲラゲラ笑うが、
部長は顔を赤くして「コッ!!」と言ったきり絶句。
たぶん「コノヤロー!!」と言いたかったが、
ショックが大きくて言葉が上手く出なかったのだろう。

夕方、非常階段でオイラはタバコを吸っていた。
部屋の中で吸わないようにとのお達しなのだ。
そこへ部長シモン(同僚)がタバコを吸いにやってきたよ♪
2人、仕事の話を始めたりしてたんだが
「指輪、見つかりましたか?」とオイラ。

あ、やばい。
部長頭抱えてうずくまった。


「さゆりさん!せっかく忘れていたんだから
思い出させちゃダメじゃないすかぁ!」とシモン。
部長、顔を赤くしたままスクッと立ち上がって
「ま、ね。ひょんな所から見つかるんだよね、こういうのって」
「そうですよ。私も離婚した後に見つかりましたもの(^O^)

部長、顔をしかめたまま無言。

「それに、指輪を無くしてから、すぐに離婚したわけじゃなくて、3年経ってからですから。
 部長もすぐというんじゃなく、あと3年は大丈夫ですよ(^O^)

あ、また部長顔を赤くしてうずくまった。
「オバチャン!!あんまり言わないの!
なんでも喋んないの!!」シモン、裏手パンチ。

昔昔、一度おにぎりを握っていた時、
指輪をはずして(ばい菌はいるでしょ?)握っていたのだ。
握り終わったおにぎりを、まな板の上に並べ、アルミに包んで出かけ…。
帰り、おにぎりが余ったから捨てようとしたところ、
友達が食べたいというのであげたのよ。
まだ傷んでないだろうと。
「ちょっと!さゆりさん!!!」
なんだよと見ると、おにぎりに結婚指輪がめりこんでいたよ♪

よかったなぁ、捨てないで。
友達は、アタシに何を食わせる気だよ!て泣いてたけど。
その後、指輪をなくすまで、ま、世間並みに結婚生活は続いたのだ。

てな話を部長とシモンに披露して、
やはり結婚指輪とは、結婚生活を守る象徴みたいなもんですかね?
みたいな、『もうひとつの指輪物語』として締めくくったんだが、受けなかったなぁ。

部長、今度は顔を青くして去っていった。

・・・なんか、オイラ爆弾を投げたか?






戻る

表紙