♪That a spoonful of sugar helps the medicine go down♪
（一さじのお砂糖があれば苦い薬だって飲める）

子供の頃に見た「メアリ・ポピンズ」。
殆ど憶えていないのは、わが親父に連れられて「チキチキ・バンバン」やら
「サウンド・オブ・ミュージック」やらを立て続けに見たせいかもしれない。

小さい頃の記憶は鮮明だけど、
場面・場面で憶えているため整理されていなくてスピルバーグの「激突」を見た後、
そのインパクトが強かったせいか、2〜3年後には
「チキチキ・バンバン」と「激突」の黒いトラック（トレーラーだっけか？）が
ゴッチャになり、黒いトラックとチキバンバン♪チキチキ・バンバン♪の
メロディがセットになってしまった。
全然恐くない。

「E.T.」の頃は、あの感動のサントラを
専門学校の同級生の男の子がテープにダビングしてプレゼントしてくれたため、
その頃6畳の2人部屋という寮に住んでいたのだが、
やたら西日が強い部屋で夕方に聞いたせいか、
「E.T.」は寂しげな夕日のあたる部屋のカラーボックスとセットだ
（部屋に置かれていたオレンジ色のやつでした）。
ついでに、何故かテープをプレゼントしてくれた彼が、
このサントラを聞いて涙を流したのか否かいまだに謎だ。
泣ける曲かな？
そんなアタシは、「ニュー・シネマ・パラダイス」のバイオリンとピアノのイントロ曲で
何度も涙を流したから、人のことは言えないが…。

話は戻って、子供の頃の
♪That a spoonful of sugar helps the medicine go down♪は、
そのまんまの意味にとって
「へぇ〜、お砂糖と薬を一緒に飲んでもいいんだ」と素直に思っていたけれど、
年を取るにつれて、なかなか深い言葉なのね、と感心する。
なるほどね、と。

桜の開花が早い今年、満開なのは桜ばかりではなかった我が家。
ユリもアヤも、頭の中の何かが満開になってるような春休み。
「○○ちゃんちに泊まりにいくね♪」
「遅くなったから、○○ちゃんとこに泊まるね♪」
のきなみ、そろって泊りがけで遊ぶようになってしまった。
なんなんだ？その開放感は。
春のそよ風に浮かれて、
ツートンだった髪の手入れに出かけた長女に聞いてみた。
「いくらしたの？」
「1万3千円」
…清く貧しい母子家庭のすることじゃないな。

桜の薄紅色と淡い青空に浮かれているのは、我が娘たちばかりじゃなかった。
髪があまりに伸びて、うっとおしくなった私はまたも美容室へGO。

「さゆりさ〜ん！伸びましたね〜〜！」

担当のお姉ちゃんがえびせんよりも軽いノリで寄って来た。
…この人、こんなノリの人じゃなかったはず。
それに顔というか、化粧がちょっと変わったような。
そんなことを考えてしまったため、ちょっとの間が空いた。
「今日、アタシ朝の7時に着付けの予約が入っていたんですけど、
　昨日なかなか眠れなくって。
　だからみょう〜にテンション高いんですぅ。
　でも、引かないでくださいね♪」
「だから、アイラインをそんなに斜め上に引いてるの？」
「えー、いやだぁ。これはいつもこのくらいですよ〜」
アハハと笑って肩をポンと叩く。
今日は思い切って10センチは髪の毛をカットしようと考えていた私は、
なんか嫌な予感がした。
危ない。

危ないぞ、この姉ちゃん。

さて、2人で髪型のカタログを覗き込んで、
ではこの髪型に、というのが決まった。
そして、カット。
「なんか、朝のうちは緊張して全然眠くなかったんですけど、
　午後から暇になってきて眠くなってきましたよ」
「でも、テンションが高いんでしょ？」
「もう、無理やりテンション上げないと、手が震えて〜」
カットしている最中に恐ろしい事を言う。
「だ・大丈夫なの？切りすぎとかされたら…」
「だ〜いじょ〜ぶですよ〜♪」
口調はあくまで能天気。
しかあし、手が震えてるじゃん！マジで！
酔っ払ったような口調のどこが大丈夫なんだ？
ぜひ教えてくれ。
「な〜んか、こんなに天気が良くて桜が綺麗だと、ウキウキしてきますよね〜♪」
とかいいながら、チョキチョキチョキ、彼女の頭の中も、桜が満開らしいなとわかった。

早く散ってしまえ、その桜。

「は〜い、出来ましたよん。今までよりも若く見えて、いつでも再婚OKな感じに☆」

20cmは短くなった、若いというより髪だけ幼げな私が鏡の中に。

常々、オバチャンは何故か
パンチパーマのような髪型の人が多いのが謎だったが
わかってしまった。
頭ン中が春まっさかりの美容師に当たるためなんだろう。

さて、髪が伸びるまで、どんな砂糖を飲み込めば耐えられるんだ？
少なくとも、スプーン一杯じゃ間に合わない（泣）。