海洋空間女であり過ぎた女の日常



第23回 何を煮込んでいるの?   2004.3.5



オイラの煮込み料理はコクがある
おしなべて、コクのある味に出来上がる。

そんな風になってしまうのは、煮込んでいる間、いろんなことを思い出すからだ。
作るのは、たいてい夜中。
ちょっと落ち込んでいたり、考え込んでいたりすることがあると、
「よし!お料理テラピーすっか!」
そんな言葉があるか知らんが、エプロンしめてパタパタと準備を始めるのです。

思い出を料理と一緒に煮込んでいるつもりはサラサラないけれど、
できあがってしまうといつもまったりとコクのある味に出来上がる。
理由はわかっている
せっかちなオイラは一気にやり遂げないと気の済まぬ性格ゆえ鬼の形相で準備、
ひたすら、ひたすら野菜をきざむ、肉をきざむ、炒める、炒める、
数種の調味料を合わせておく、そして、数種の隠し味。

そうして、やっと煮込む段階になって一息つく。
クツクツと小さな無数の泡と湯気が鍋から立ち昇るのを、
折りたたみ椅子に座って鍋の中を時折かき混ぜながらぼんやりと眺めている間、
いろんな想い、いろんな出来事がポツポツと浮き上がる。

娘たちが小さい時の子猫のような寝顔。

赤ちゃんのミルク臭い体臭。

初めて彼に会った時に掛けられた言葉。

癒えない傷を残す、投げつけられた言葉。

落ち込んだこと。

幸せな出来事があった時の周りの色。

友達が悩んで泣いている時の無力感。

考えても答えが出ないこと。

死にたいと思ったこと。

テレビなんかでコックさんが手で鍋の中の料理の匂いをあおいで
鼻に持ってくるようなしぐさをするけど、
やってみると案外匂いがしっかり分かるので、
ここで何を加えるかをその時々の思いつきで、
にんにく醤油を数滴入れたり、ケチャップを加えたりする。
この手であおぐというしぐさが重要です。
鼻を近づけただけで何を加えるかを判断すると、外れることが多いから。
そうして出来上がりは、いろんな想いが込められて重い味になるんだろう。

出来上がった達成感と、
気持ちのしこりを鍋の中にぶち込んだような気分で少し晴れやか(^o^)
そんな料理は身近で大切な人にしか、提供できない
そんな料理はある種の毒だと思うのだ。

「不味いの『ま』だけでも、言ってみやがれっ!」
そんな気迫をビキビキと、ギリシャ神話の大神ゼウスの雷の如く
四方八方飛ばしながらテーブルに運んでくるんだもの。
そりゃあ気の置けない人以外には、出せないでしょう。
ある種、闇鍋より恐怖だろう。

数える程度の回数だけど、彼氏に食してもらったことがある
彼の職業はコックさん
なので、提供するオイラとしても、ある種真剣勝負なのだ。

「この間食べた、あの料理、美味しかったなあ、また食べたいな」

ウッシャー!勝利!
やったぜ、カトちゃん♪(←古すぎて、我ながら頭痛い)

そんな情念込め込めのオイラの料理も、我が娘たちはガッツリ無言で食し、
後はマンガかTVを見ながらケラケラ笑って終わる。
ゼウスの雷なんてどこ吹く風。
「え?雷?なんにも感じてないけれど?」
雷よりも強いのは大地母神ガイアか?

ま、ね。
そんなもんさ、娘なんて。

Calling All Angelsを聞きながら♪






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