海洋空間女であり過ぎた女の日常



第21回 寒空にカット   2004.2.3



しばらく美容院へ行っていないオイラの髪は広がり続けて収集がつかなくなり、
これでウェーブがかかっていたらゴルゴンメデューサともいう)のうようだった。
隣の奥さんが回覧板を持ってきたときに出てみたら『!』と息を呑んでいるのが丸わかり。
が、さすが年の功(推定62歳)。
にこやかに「これ、お願いしますね〜」と言いつつ去っていった。
そんなにか?と思って鏡を見る。
そんなにだ(>_<)

というわけで、美容院へ行ったんですよ。
ホントのこというと、苦手なんですよ。
美容室っての。
シャイなオイラの本音としては、
話なぞしないで気難しく一言も口をきかずに座っていたいんです。
でも小心者のため、話しかけられたらばつい、
『楽しく時を過ごしましょう♪』
という意味不明のサービス精神で受け答えをしてしまう。
そのために、酔ってないのに酔っ払いトーク全開の空間
美容室のスタッフと作り上げてしまうわけだ。
遺憾である。

どうしようかちょっと迷ったけど、
ゴルゴンでOKというほどまだ女を捨てていないため以前行っていた美容院へGO

入り口のドアに近づいたら美容室のスタッフが立っていて

「おっ!お久しぶりです!」

来たなコヤツというノリで声かけられた。
この時点でちょっとブルー入る
顔を憶えられているのか。
彼に頭をいじってもらったのは1度だけのはず…。

店に入ると、ラグビーやってましたぁという雰囲気のゴツイ茶髪のアンちゃん
「こんな爪(根元から先まで栗色のグラデーション)になっちゃったんですよ」
と手を広げて寄って来る。
知るか〜
ブルーもっと入る

暇だからなのかワラワラと寄ってきてくれるのはいいんだけど、
他のお客のマダム達の

「何?あのゴルゴン」

ってな視線が痛い。
だからここに来るのイヤだったんだよ。
この店の担当はキレイなお姉ちゃんなのです。
だからして、オカマに当たるわけはぬぁい!
オカマらしき野郎もいない。

はずだった。

さて、この店のシステムではパーマの場合、
カットの前と後にシャンプーをしていただけるんですが、
先程書いたラグビーあんちゃんがシャンプーをしてくれるためにやってきた。

シャワシャワシャワシャワ

「最近、飲んでますか?さゆりさん」
とかなんとか言いながらオイラのウナジを撫で上げる

シャワシャワシャワシャワ

「いやぁ、最近は禁酒生活で。あなたは飲まないんだっけね」
「もう、全然飲めないんですよね〜。
 飲めそうに見えるから奨められるんですけど、さっぱりなんですよ〜」

「ラグビーやってそうなごついあんちゃんが一滴も飲めないってのも、
 ギャップがあってチャーミングなんじゃない?」

「俺、よくラグビーやってたと思われているんですけど、サッカーなんですよ。
 じゃキーパーやってたの?って聞かれるんですけど、MFなんですよね〜」

「あっ、そうなんだ」

シャワシャワシャワ

こらーっ!
ウナジ、首筋、撫でるのやめーい!!!
シャンプーはなぁあああ、力を適度に込めてガシガシ洗わんと


感じるじゃねーかーっ!!!

シャイなオイラは心の中で絶叫。

なんだこのギャップは?
ごついあんちゃん、指先だけは繊細ってことか?
美容室で働くスタッフの特徴か?
いや、それは決してない
もう若くはないくらい生きてきて、
男性に髪を洗ってもらったことも数知れずのこのアタシ。
こんな性感シャンプーに当たったことは今までなかった。
となると、ではこの店の特徴か?
スタッフが繊細なのか?
いやいや、それも違う
この美容院の別の女の子に髪の毛をアイロンをかけてもらったことがあったが、
通常は耳にタオルをかけて火傷しないように気をつけながらやるのだ。
通常じゃないこの姉ちゃん
耳にアイロンがバンバン当たるので
「あの、熱いんですけど」とオイラ。
「そおっすか?私は熱くないですよ?」

いいのか?
客商売でここまで客を気にしなくていいのか?

だからして、スタッフが繊細なのではない。
指先だけが繊細なラグビーやってそうなMFのサッカーあんちゃんは、
やはりある種特殊な指先なのかもしれない。
それは、特殊な趣味に通じたりして(予想)。

それでちょっと思い出した。
以前遊びに行っていたゲイバーがあるのだけど、
そこはただ単にカミングアウトできる空間ってコンセプトで
決してナンパ場ではない店なので、ただお喋りしに行っていた。
その時に感じたんだけど、そのお店のスタッフ・お客、
どちらもある意味中性化しているようだった。

男性が好きな男性は、外側はスーツ・ネクタイ・短髪の普通の勤め人なんだけど、
しぐさや雰囲気、言葉使いに独特の『オネエ感』が漂っている
(「○○さん、今度動物園に行きたぁ〜い!」というオスギとピーコ喋りの森田剛とか)。
女性が好きな女性も、外側はたま〜にすごい短髪(というよりスポーツ刈り)
の女性がいたけれど、大抵はフェミニンな格好を好んだり、
ちょっとスポーティな感じのオシャレさんが多かった。
が、しぐさや喋りに漂う『オニイ感』は隠しようもなく、
タバコに火をつけてくれ、肩に腕をまわされたときは
みょう〜なフェロモンを感じてみょう〜な気分になったものだ。

年をとってくると、何か全てがめんどくさくなり、
それに酒が入るとめんどくさがり×3とかになる。
自分で決めた『ここまで!』というデッドラインのハードルがリンボーダンス並みに低くなって
みょう〜な気分のままみょう〜なことになっても

まっ、いっか!?

ってくらい、めんどくさくなるのです。

閑話休題。

すごく大雑把に言っちゃえば、どっかに必ず綻びのようなものが出ているのだった。
フェミニンな姉ちゃんが喋ると男らしいとか、
ちょっとマッチョな勤め人がオスギとピーコみないな喋りとか。
オイラの相方は髪の毛が背中の中ほどまでのロングだけどバイセクシャルで、
やはり喋りと考え方は男らしいし(社内でセクハラするとかね)。
その逆もあるとは思うけど、見かけと中身を均してしまえば、
男と女の中間の性を持った人たちという印象を持っていた。

だからして、
この繊細な指先のラグビーあんちゃんの見かけとしぐさを均してみたらば…。
なにかオイラの琴線に触れるものがあるぞー。

結論。

どんな店にも、1人のホモ。






戻る

表紙