海洋空間女であり過ぎた女の日常



第19回 インド象   2003.11.27



「さゆりさんに報告することがあるんですよ」

ファミレスのバイト時代に一緒だったMちゃんが、
席についてドリンクをオーダーし終えると落語の枕みたいな話は抜きに、
本題から喋り始めようとしてた。
ピンときたので
「結婚おめでとう」
というと、少々ビックリしたような顔して
そうなんですよ。わかりました?ずっと話もしていなかったのに」

23歳になったばかりの、身長173cmの大きなMちゃん
その背の高さゆえ、また妙に落ち着いた外見のせいで20歳の当時、
いつも25〜6歳に見られるため、
「一生彼氏ができないかも・・・」
と出会った頃はよく嘆いていた。

大丈夫だよ。
あと5年くらいで周りが追いつくから、大丈夫だよ。
あなたは人より少しだけ大人な部分があるだけなんだから。

そんな慰めはただの慰めにしか聞こえないようで、
仕事を頑張る!というスタンスで生きていた。
そんなMちゃんに2年ほど前に自分よりちょい背の高い彼氏ができて、
大きな波も谷も山もなく交際が続いていたのだが…。

「妊娠したの?」
23歳の結婚は、やっぱり早いでしょう。
いいえ、妊娠はしていないんですけど。
 なんか、お互いの家に挨拶しに行こうって 言ってたんですよ。
 で、行ったら、話の流れで
 『じゃあ、結婚式はいつ頃にしようか』
 『結納なんかの時期もあるし』
 『式場の予約もしないと』って、どんどん話が進むんですよ〜!

 私としては『へっ???』って思っているうちに、
 来年の秋頃に結婚するらしいんです…」

らしいんですって、アンタ自分の結婚なんだけど。

こんな会話からして、なにか自分でも釈然としないというか、
『このままで良いのか?』というプチ鬱のようになっているみたい。
だからして、この2年の交際で山も谷も波もなかったのに、
いきなり『ひょっとして、私たちって性格合わない?』というくらい、
意見が合わない出来事や喧嘩が多発。

住む場所(彼氏は自分の勤務先の近くに住みたいので、Mちゃん引越しておいでという。
そうすると、彼女は新幹線通勤で仕事場へ)や、
仕事を続けていくことや、妊娠のことや、etc etc…。

話し合えば合うほど、お互いの考えのズレで

 キィーーーッ!!

と、ちょっとした規模の喧嘩に発展する。
タッパのある2人が言い合いをする風景。。。迫力。
身長が152のおいらからすると、ある意味ゴージャス☆

「同棲して様子をみるというのはダメなの?」
「ダメなんですよ。家の親、そういうの絶対許してくれないから。
 一度結婚すると、いろいろ合わないとか問題あったときに
 簡単に別れることができないじゃないですか。
 今からこんなんじゃ、ホント結婚したくない気分になってきたのに、
 家の家族が大乗り気で
 『絶対に 結婚しろ』ってプレッシャーかけてきて…もう、憂鬱」


☆☆☆☆


Sくんに娘が生まれた。
それはそれは、もの凄い喜びようで、生まれたばかりの娘の画像を携帯の待ち受けにして、
それを眺めるだけでは飽き足らず飲みに行った店にいる全ての人たちに見せびらかす
大抵カウンター席で皆とお喋りしながら飲むので、隣に座ってしまった人は悲劇だ。
娘のオシメを替える画像を見せられるからだ。
それ見て、どんなリアクションをしろっつうの??
他人にとってはマニアな画像でしかないものを…。

それほどはしゃぐ彼だったが、
娘と同じ屋根の下で夜を過ごすことはまだない
娘の母親、つまりSくんの彼女がまだ人妻で、
旦那さんとの離婚が進まないまま彼の子を産んで旦那さんと暮らしているから
だ。
旦那さんは自分の子でないことは承知しているという。
でも、子供も彼女も離さないという。
だから、彼女から送られてくるたくさんの数の娘の画像がSくんの宝物であり、
気力の源になっている。

いろいろとゴタゴタしてから早1年以上。
こんな関係、絶対に結論が出ないはずが無い!
どんな結末かはわからなくても、結末に向かって収束していくしかないだろう、
という私の予想は外れて事態は進まずむしろややこしくなっていくようだ。

ま、ね。

なんかね。

離婚も結婚も大変よね。

婚姻届って、ほんとインド象より重たいのね。
すみません、独り言です。






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