海洋空間女であり過ぎた女の日常



第17回 後ろバッテン2   2003.10.13



永遠にこの店からオバチャンが去ることはないだろうと思われた日々。

仲の良くなったバイトの若い子が泣きながらオイラに愚痴る。
あの人(オバチャン)は、なんなんですか!もう嫌です。辞めたいです」
これを2〜3人から何度もやられて、
いい加減にしてくれよオバチャン』モードになっていた頃だった。
そして実際1人、2人と辞めていったので、
なぜ明らかにオバチャンより仕事で戦力になるだろう、この人たちが辞めるのだ?
と考えると哀しくなっていた。
辞める理由は表向き、
「学校が忙しい」
「体調不良」
となっていたけど、実は違う。
皆知っていた。
それでも止める事ができなくって、哀しかった。
仕事でも、バイトでも、『ある人物が嫌で辞める』というのは、
なんか即物的でもあるし、泣きながら愚痴ってくれたのに、
結果的に力になれなかったのも、哀しかった(オイラって真面目)。

そんな日々のある日。
ランチタイムに備えるために、午前の時間中にバイトの休憩を回して
オイラとオバチャンの2人だけの時だった。
あと15分で頭数がそろうというのにどんどんお客が入ってきて、
オイラが手配師のようにテーブルにお客を案内していた。
これは、簡単なようで結構頭を使います。
空いているからと一気にぶっ込むと、
キッチンが爆発して料理の上がるのが遅くなったりするし、
オーダーの飲み物やナイフ・フォークのセッティングが間に合わなかったり、
料理の前に出すはずのスープが料理が運ばれた後になるってな事態になる。
お昼の時間が限られているお客様に迷惑をかける事になってしまう。
かといって、テーブルが空いているのにお客を案内しないわけにもいかない。
歩く速度、メニューを渡す速度なんぞで、さりげなく調整していた…のに。


おいっ!

オバチャンがお客をぶっ込む
ぶっ込み続ける(: ;)
今、頭数が揃ってないのに、どうやって誰が上がった料理を運ぶんだ!
その頃のオイラは、ライスならば最大7枚を一気に運べたんだけど、
そんなオイラもちょっと無理だ、運びきれないと考えた。
チョイ余裕ができたので、カウンターの中でオバチャンに頼む。

「すみませんが、ご案内は私がしますので、
 お冷などの先出しとか、オーダーとかを
 やってもらえませんか。
 役割分担というのがあるでしょう。
 いっぺんに入れると、ホールもキッチンも潰れて回らなくなってしまうじゃないですか」


今までの助けてくれ!の日常で、オイラもキレかかっていたかもしれない。


「うるさいわね!!アンタなんか嫌いなのよ!」
といって、バシッ!
 
ぶたれた。

ヘッ?

今、アタシってばブタレタ?

カウンターにおじさんが1人座っていて、この様子を見ていた。
おじさんの方を見ると目が合って、
「そうだよ、今キミはブタレタンダヨ」と目で喋って頷いた。

「アンタといると、腹たつのよ!あ〜腹立つ!」

と叫び捨てて、テーブル席のホールへと飛び出したオバチャン。
しばし呆然のオイラ。

ここは『お水の花道』の世界だったっけ?確かファミレスだったはず…。
なのに、なぜ、こんなベタな女の諍いがお客の前で起こるのだろう…。

カウンターのおじさん、
「大変だよね」とポツリと一言。
それ以外に言葉は無いかもしれないし、あっても言わないかもしれない。

でもランチタイムピーク前のオーダーの嵐が目の前に迫っていた。
オイラもホールへと出ていき、お客のオーダーを取っていたが、
怒りがこみ上げてきて…
スープやコーヒーをサーブする手が怒りで震えて、
カップが カタカタカタカタ 音をたてて揺れている。
怪訝に思ったお客様がオイラを見上げると、
ニッコリと、ものすんごい愛情のこもった笑顔のオイラ。
目をそらすお客。

「ヤベーッ!なんか、やばいヤクやってんじゃねーの?コイツ!」
そう思ったに違いない。
いつもは笑顔を向けると笑顔で返すお客様達。
なのに、皆み〜んな、オイラが笑顔を向けると下を向く…。

支配人がやっとホールに出て来たので、
お願いですから、5分だけ後ろに下がらせてください
 今、ちょっと揉めていたので落ち着かないと仕事にならないんです(: ;)
 すみませんが、5分だけ」
と頼み込んで休憩室に下がった。

休憩室には、誰もいなかった。
奥に着替える部屋もあり、これからホールに出る子がどうやら着替えをしていたらしい。
チラッと入ってくるのが見えたのよね、ホールに居る時。
だから、その子が出てくると丁度いい時間だろうと考えて、
それまでクールダウンするべし、するべし、するべしぃ…

まずは、椅子を蹴っ飛ばす

ドガーン!

テーブルを両手握りこぶしでダーン!
壁に肘うちドーン!
蹴りガーン!と入れて、
ドカン!ドカン!

盛大に音をたてて1人で暴れまわった。

少し疲れてきたけど、更衣室から音も聞こえず、出てくる様子がない。
あれ?あんまり時間がたっていなかったかな?と思いつつ仕事しに出て行ったのでした。
後から考えるに、きっと怖くて更衣室から出てこれなかったんだろう。
ゴメンね。
ちょっとだけ、我を忘れたの。


さて。
オバチャンは、これをキッカケにお仕事をお辞めになられました(^_^;)
(陰で店の英雄になったオイラ。これも、なんだかなぁあ)

この出来事を支配人に話し、オバチャン、オイラ、支配人と3人で話し合いなどをしたのですけど、
その間、3度も「もうイヤーッ!」と叫んで事務所を飛び出しては、呼び戻し。
話し合いにもならず(こっちがイヤだっちゅうねん)、
様子がなんというか…。

仕事する前に、カウセリング受けた方がいいんじゃないか?
働くどころではないんじゃあ…。
という感じだったため、もう、もう、もう駄目です。
辞めてください。ということに。
オイラも、ぶたれたくないし。

世の中に変わった人はたくさんいるけれど(きっとオイラもその1人)、
向こう側に行ってしまった人、ボーダーの人と灰色の濃淡がそれぞれなんだと思う。
行ってしまったときに、極端な犯罪なんて行動をとるのか。

今回の自転車通り魔と年齢が近いので、
こんな出来事をつい苦々しさと一緒に思い出してしまったのでした。
アホな思い出…。

ニルバーナを聞きながら♪






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