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スペシャルコラム




vol.3 緊急執筆 祝!田臥勇太 NBA開幕ロスター入り!     2004.11.2



田臥勇太

いやあ、本当にめでたい、あっぱれ、素晴らしい。
田臥勇太くん、NBAロスター入り、本当におめでとう。
日本生まれの日本国籍を持つ日本人としては、史上初めての快挙だ。

曲がりなりにもバスケットボールを少しはかじっていた同じ日本人の身から見ると、
ただ練習でスティーヴ・ナッシュ
ショーン・マリオン
を相手にプレイしているってだけでもう
「うぉーっ、すげえ!」って叫びたくなるし、
ましてやプレシーズン・マッチに出場して、
あのステージの上でアシスト・パスなんかを送り出してる姿を見ると、
もはや表現のしようもないほどにリスペクトしてしまう。
それだけでもそれなのにそれなのに、開幕12人のメンバーに残るなんて!

もちろんベンチ・スタート、
出場時間も恐らく1試合平均10分にも満たないほどに限られてしまうだろうが、
だからこそヤツらの鼻を明かすようなサプライズを与えられる可能性も
十分あると思う。
田臥に求められる役割は主に、
チームが劣勢の時の起爆剤リズム・チェンジャー
あるいはスターターのナッシュの純粋なバックアップであろう、と予想される。
サイズが小さくて速い彼のプレイスタイルは、
フェニックス・サンズ伝統のラン&ガン・スタイルにも
良くマッチすると思われるから、
あるいは前者として挙げたリズム・チェンジャーというよりも、
ナッシュと類似したリズムとテンポとスタイルを保った
リザーヴとして扱われることの方がひょっとしたら多くなるやも知れない。
言い換えれば、オールスターでもある正PGと
まったく違うタイプのプレイヤーとは言えないにも関わらず雇われた

という事実は、チームがそれだけ田臥に期待をかけている、
という表れでもあると言える。

正直言って巷間でまことしやかに囁かれているように、
NBAという組織がジャパン・マネー(直接的あるいは間接的な)
獲得を視野に入れた上での日本人プレイヤー誕生だ、
という見方もあながちまったく事実ではないとは個人的には思わない。
もちろんそれだけが理由であるはずはなく、
実力の上でも十分にNBAというクラスで通用する、
と判断が下されたからこそ生き残っていることもまた紛れもない事実。
成功者にとっては実力のみならず運も大きく左右する、
ということも間違いない真理、
日本人であるということが仮に有利に働いたのだとしたら、
彼はそれを存分に利用し尽くせばいい
し、
そうしてチャンスを得ることができたんだったらあとは文字通り実力次第、
ゴチャゴチャ言うヤツは結果で黙らせてしまえばいいだけの話だろう。

前置きが長くなってしまったが、彼がチビの日本人だと舐められていればこそ、
そこに付け入る隙が生まれるし、
ひょっとしたら全米中を驚かすような活躍ができるかも知れない、とボクは思う。
そのためにはよく言われていることだが、
やっぱり外角のシュート力向上は必須だろう。
おそらく今のレヴェルのままのシューティング・スキルでは、
ディフェンスは彼のアウトサイド・シュートは捨ててしまって、
スピードに対抗するべく常に離れ気味に守ることになりかねない。
離れて守れば打たれてしまう、
かといってタイトにつけばそのクイックネスで抜かれてしまう、
そう相手ディフェンスに思わせる
ことができれば、
田臥がNBAで成功する確率はグッとアップする。

パシングに関しても、天賦の才能が備わっていることは確かだし、
現時点でのスキルも十分NBAレヴェルに遜色ない。
あとは、大きなプレイヤーばかりに囲まれてプレイしている、
という状況と感覚にもっともっと慣れる
ことなんじゃないかと思う。
パスコースを見つけ出す能力には長けているし、
思ったところにボールを投げ入れることもできてはいるが、
時にディフェンス・プレイヤーの手が届くレンジを見誤ったがゆえのパスミス、
ターンオーヴァーが少なからずあるように見受けられる。
恐らく日本国内でプレイしている時には
ディフェンスは届かなかったギリギリのコースを狙っているんだろうが、
ヤツらは平気でそのエリアを侵してくる。
ブリガムヤング大・ハワイ校時代から含めると
アメリカでのプレイ経験も決して短くはない田臥だが、
そこはやはりカレッジならびにABAとNBAの次元の違い、
もう少しアジャストする必要はあるのかも知れない。

あとはやっぱりディフェンス
これに関してはサイズのミスマッチだけはいかんともし難いものがあるが、
それでも近代バスケットボールにおいては、
ポジションの違い、またスターターorリザーヴの違いに関わらず
最低限のディフェンス・スキルは絶対的に要求される。
まずはつまらないファウル・トラブルで
限られた出場時間をさらに削ってしまうような事態だけは避け、
あとは持ち味である平面的なスピードを最大限に活かして
スティールで貢献
することが大切なのだろうか。

スピード、クイックネスについては衆目の一致するところだが、
まったく問題ないだろう。
すでにNBAの中でも上位に入っていると言ってしまって何ら差し支えない。
そうでなければあのサイズでNBAに潜り込めるわけがない。

一部のアメリカのメディアが書きたてているような、
“NBA界のイチロー”という表現に値する活躍を田臥勇太ができるか、というと、
そこは哀しいけれど現実的に言って不可能に近いと思う。
だが少なくとも彼は“NBA界のマッシー村上”にはなった。
何でも一番最初はスゴいしエラい。
一日でも長くNBAに残れるように、
そして一瞬でも長く人々の歓声を浴びていられるように、
心から田臥勇太を応援しよう。






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