海洋空間車



MGFからアルファスポーツ156ワゴンへ〜乗り換えの道程


その4「スポーツワゴンの毒に当たる」   2004.3.30


コンパクトサイズでリーズナブル、という出発点から始まった次期愛車探し。
であるからして、当初アルファのディーラーに行った時の対象車は、
先述のように147だった。
実際に見て、そして乗ってみて、気に入ったこともまた事実。
しかし、まったく諸手を挙げて超の付くお気に入りになったのかというと、
実はそれもまた違うのである。
その理由は、147のスタイリングにあった。

元々ボクの車好きはスーパーカー・ブームに端を発しており、
小学生時代に目を輝かせて憧れていた車は、
ランボルギーニ・カウンタックやロータス・ヨーロッパ、ランチア・ストラトス、
デ・トマソ・パンテーラ、そして童夢ゼロなどなど、まさに夢のスーパーカーたち。
余談だが当時はこれらのミニカーなどもたくさん持っていたのだが、
現在は一台も手元にない。
今思えばたいそうもったいない話だ。
大人になってからも、「かっこいいなあ」と思う車はいわゆるスポーツカーが多く、
どちらかというとミニヴァンやステーションワゴン、
ハッチバックなどには食指を動かされることはなかったのである。
147という車は、もちろんハッチバック・タイプのCセグメント・カー。
今の時代においてとてもファッショナブルだし出来も良い車、
と頭では充分に分かっていたのだが、どうしてもボクの本能の一番芯の部分、
無意識の領域が最後まで147を受け入れようとしていない気がしたのである。
今後少なくとも数年は生活をともにする数百万円の買い物、ということを考えると、
ここは素直に本能の送るシグナルに従うべきかなあ…。

そう思いつつ、2003年11月から12月にかけ、その後都合2回、アレーゼに足を運んだ。
そんなある時である、ボクが156スポーツワゴンの実車を目の当たりにしたのは。
「…何なんだ、この美しいワゴンは…!!!」
正直それまでボクは、ステーションワゴンを選ぶのは
決してスタイルを気に入ってではなく、その実用性に重きを置いての結果だろ、
と高をくくっているところがあった。
実際に、ボクの感覚ではかっこいいと感じるワゴンはあまり見たことがなかったし、
それにありふれている、という点もまたマイナスポイントとなっていた。
しかし156スポーツワゴンは違ったのである!

アルファ156スポーツワゴンを前から
ニュー156スポーツワゴンを前から

アルファ156スポーツワゴンを後ろから
こちらは後ろから見たところ


それまでもアレーゼで156セダンの実車は何度も見ていたし、
乗せてもらったこともあったが、ボクはそのセダン・ボディには惹かれなかった。
それに顔も、ことセダンに関して言えば、
デ・シルヴァがデザインした彫刻的とも表現することが出来る
先代の方が合っている気もした。
だが、しつこいようだがワゴンを目にした瞬間、その印象は一変したのである。
造形美という言葉がふさわしいそのたたずまい。
どちらかというと取って付けた感の強かった、
またそれが魅力でもあった先代顔のアルファ伝統の“盾”のデザインが一新され、
ノーズと一体化された形の、いわゆるブレラ・タイプの現行マスクも、
ワゴンボディには実によく似合う。
鼻の先からボディ・エンドにかけて、
より完成された曲線美を描き出しているのに一役買っているという印象を持った。
何より特筆すべきは、
車を横から見た時のボディ・ラインの微妙なゆがみというかたわみというか、
実に個性的で官能的なプレス・ライン。
濃い目のカラーのボディに街路樹なんかが映り込んだ時の美しさは
もう、尋常じゃない。
実は初代156のコンセプト・デザインはチェントロ・スティーレではなく
彼の手によるものだった、ということが明らかになったイタルデザインの巨匠、
ジョルジェット・ジウジアーロのこの車に対する包括的イメージが、
今回のフェイズ2によってすべて具現化されたといってよいのではないだろうか?

先代アルファ156の顔
これは先代アルファ156の個性的なマスク


ただ一つ付け加えるならば、
積載量などワゴンとしての機能は決して期待してはいけない。
アルファという車のご多分に漏れずそのスタイリング、
エクステリア・デザインを最も重視して作られたであろう156スポーツワゴンは、
ビックリするほど荷物が載らない。
横幅はゴルフバッグをそのまま入れられないほどだし、
トランクスペースの奥行きもセダンとほぼ変わらないように感じる。
辛うじてのアドヴァンテージはラゲッジ・スペースの高さと、
リアシートが可倒式だということぐらいか。
まあでもこの点についても、別に毎週ゴルフに行くわけでも
キャンプをするわけでもゲレンデに行くわけでもないので、
実用性は充分に耐えられるレヴェルにあるとボクは判断した。
何よりももうその程度のデメリットでは微塵も否定できないほどに、
ボクは156スポーツワゴンが気に入っていた。


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