海洋空間佳本


うちの犬がおじいちゃんになっちゃった うちの犬がおじいちゃんになっちゃった」★★★★☆
やついいちろう
カンゼン

2022.9.6 記
まず、こぶしは今も健在ということで安心したが、それでも、"プロローグ"と"はじめに"でもう、うるうるしてしまいそうになる。
誤植が少なくないことや構成面に工夫の余地があることを含め、もう少し編集が手を入れたらいいのに…と感じるぐらい、プロっぽさと対極を為す素朴かつ素直な言葉遣いで、犬と日々暮らすことの幸せが存分に綴られている。
あまりに正直過ぎて? 命に係わる誤食騒動を何度繰り返してもまったく飼い主としての反省が感じられない姿勢はどうかと思うが…(苦笑)。
技術的にはまるで素人が書く文章なのだろうが、そんなことは超越して"こぶし日記28"は紛れもない名文であり、他にも、犬とともに時を過ごすことの本質を見事に喝破した表現がたくさん、この本の中には詰まっている。

「こぶしは僕より後から来て、最初は年下だったのに、僕より先に年を取って先輩みたいになり、大切なことを教えてくれる。」
「『うれしいねーありがとうね』という感謝しかこぶしからは伝わってこない。昔を思って感傷的になっているのは、飼い主の僕だけだ。こうやって日々の幸せを感じられるこぶしは、本当に幸せをわかっているんだなと思う。だからきっと死ぬときもこぶしはそんなに気にしないんだろう。『ありがとね。ずっと楽しかったね』ってペロペロ僕を舐めて死んでいくんだろうな。」





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