海洋空間佳本


田村はまだか 田村はまだか」★★★★☆
朝倉かすみ
光文社

2017.3.25 記
同窓会の二次会、いや三次会か、そこに来るはずだけど諸事情で遅れている人物を皆でジリジリと待つ…、というその設定がまず上手い。
ジャケ買いならぬ帯買いしてしまうレヴェルだ。
そしてページを開いていくと、幸運にも期待は外されることがなく、まさしく何でもない等身大の人間模様というか、連作形式で綴られる群像が真っ向から読者に挑みかかってくるような。
カテゴリー分けすればもちろん娯楽小説の方になるんだろうが、人間の最大公約数たる心の芯にこれほど巧みに打ち込んでくる小説は同時に文学でもある。
力任せでなく、かといって遠慮が過ぎることもなく、ちょうどいい塩梅で琴線に触ってくる。
文章はちょっと際どいところを狙い過ぎたか、若干読み辛い部分はあるものの、総じて小気味良いテンポを刻みながら、最後まで勢い衰えることなく読ませてくれる。





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